第5章 市国民保護計画が対象とする事態

更新日:2022年4月8日

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第5章 市国民保護計画が対象とする事態

市国民保護計画においては、以下のとおり県国民保護計画において想定されている武力攻撃事態及び緊急対処事態を対象とする。

 1 武力攻撃事態

市国民保護計画においては、武力攻撃事態として、県国民保護計画において想定されている事態を対象とする。

(1)武力攻撃事態の類型

事態類型

想定

1 着上陸侵攻

(1)事態の概要

  • 侵攻国が侵攻正面において、海上航空優勢を得た後、海または空から地上部隊などを上陸させて、侵攻する事態である。

(2)特徴

  • 一般的に国民保護措置を実施すべき地域が広範囲になるとともに、その期間も比較的長期に及ぶことが予想される。また、敵国による船舶、戦闘機の集結の状況、我が国への侵攻する船舶等の方向等を勘案して、武力攻撃予測事態において住民の避難を行うことも想定される。
  • 船舶により上陸を行う場合は、上陸用の小型船舶等が接岸容易な地形を有する沿岸部が当初の侵攻目標となりやすいと考えられる。
  • 航空機により侵攻部隊を投入する場合には、大型の輸送機が離着陸可能な空港が存在する地域が目標となる可能性が高く、当該空港が上陸用の小型船舶等の接岸容易な地域と近接している場合には、特に目標となりやすいと考えられる。
    なお、着上陸侵攻の場合、それに先立ち航空機や弾道ミサイルによる攻撃が実施される可能性が高いと考えられる。
  • 主として、爆弾、砲弾等による家屋、施設等の破壊、火災等が考えられ、石油コンビナートなど、攻撃目標となる施設の種類によっては、二次被害の発生が想定される。

(3)留意点

  • 事前の準備が可能であり、戦闘が予想される地域から先行して避難させるとともに、広域避難が必要となる。広範囲にわたる武力攻撃災害が想定され、武力攻撃が終結した後の復旧が重要な課題となる。

2 ゲリラや特殊部隊による攻撃

(1)事態の概要

  • ゲリラや特殊部隊を潜入させて行なう不正規型の攻撃であり、不正規軍の要員であるゲリラによる施設等の破壊や人員に対する攻撃が行われるものと、正規軍である特殊部隊による破壊工作、要人暗殺、中枢機関への攻撃が行なわれるものがある。

(2)特徴

  • 警察、自衛隊等による監視活動等により、その兆候の早期発見に努めることとなるが、敵もその行動を秘匿するためあらゆる手段を使用することが想定されることから、事前にその活動を予測あるいは察知できず、突発的に被害が生ずることも考えられる。そのため、都市部の政治経済の中枢、鉄道、橋りょう、ダム、原子力関連施設などに対する注意が必要である。
  • 少人数のグループにより行なわれるため使用可能な武器も限定されることから、主な被害は施設の破壊等が考えられる。したがって、被害の範囲は比較的狭い範囲に限定されるのが一般的であるが、攻撃目標となる施設の種類によっては、二次被害の発生も想定され、たとえば原子力事業所が攻撃された場合には被害の範囲が拡大されるおそれがある。また、汚い爆弾(以下「ダーティボム」という。)が使用される場合がある。

(3)留意点

  • ゲリラや特殊部隊の危害が住民に及ぶおそれがある地域においては、市(消防機関を含む。)と県、県警察は、海上保安庁及び自衛隊と連携し、武力攻撃の態様に応じて、攻撃当初は屋内に一時避難させ、その後、関係機関が安全の措置を講じつつ適当な避難地に移動させる等適切な対応を行う。事態の状況により、県知事の緊急通報の発令、市長または県知事の退避の指示または警戒区域の設定など時宜に応じた措置を行うことが必要である。

3 弾道ミサイル攻撃

(1)事態の概要

  • 弾道ミサイルによる遠距離からの急襲的な攻撃であり、大量破壊兵器(核、生物、化学兵器)を搭載して攻撃することも可能である。

(2)特徴

  • 発射の兆候を事前に察知した場合でも、発射された段階で攻撃目標を特定することは極めて困難である。さらに、極めて短時間に我が国に着弾することが予想され、弾頭の種類(通常弾頭またはNBC弾頭)を着弾前に特定することは困難であるとともに、弾頭の種類に応じて、被害の様相及び対応が大きく異なる。
  • 通常弾頭の場合には、NBC弾頭の場合と比較して、被害は局限され、家屋、施設等の破壊、火災等が考えられる。

(3)留意点

  • 弾道ミサイルは発射後短時間で着弾することが予想されるため、迅速な情報伝達体制と適切な対応によって被害を局限化することが重要であり、屋内への避難や消火活動が中心となる。

4 航空攻撃

(1)事態の概要

  • 重要施設の破壊などを目的として、航空機に搭載したミサイルなどにより急襲的に行われる攻撃である。

(2)特徴

  • 弾道ミサイル攻撃の場合に比べその兆候を察知することは比較的容易であるが、対応の時間が少なく、また攻撃目標を特定することが困難である。
  • 航空攻撃を行なう側の意図及び弾薬の種類等により異なるが、その威力を最大限に発揮することを敵国が意図すれば都市部が主要な目標となることも想定される。また、ライフラインのインフラ施設が目標となることもあり得る。
  • なお、航空攻撃はその意図が達成されるまで繰り返し行なわれることも考えられる。
  • 通常弾道の場合には、家屋、施設等の破壊、火災等が考えられる。

(3)留意点

  • 攻撃目標を早期に判定することは困難であることから、攻撃の目標地を限定せずに屋内への避難等の避難措置を広範囲に指示する必要がある。その安全を確保しなければ周辺の地域に著しい被害を生じさせるおそれがあると認められる生活関連等施設に対する攻撃のおそれがある場合は、被害が拡大するおそれがあるため、特に当該生活関連等施設の安全確保、武力攻撃災害の発生・拡大の防止等の措置を実施する必要がある。

(2)NBC攻撃の想定

種別

想定される被害及び留意点

1 核兵器等

  • 核兵器を用いた攻撃(以下「核攻撃」という。)による被害は、当初は主に核爆発に伴う熱線、爆風及び初期核放射線によって、その後は放射性降下物や中性子誘導放射能(物質に中性子線が放射されることによって、その物質そのものが持つようになる放射能)による残留放射線によって生ずる。核爆発によって1)熱線、爆風及び初期核放射線が発生し、物質の燃焼、建造物の破壊、放射能汚染の被害を短時間にもたらす。残量放射線は、2)爆発時に生じた放射能をもった灰(放射性降下物)からの放射線と、3)初期核放射線を吸収した建築物や土壌から発する放射線に区分される。このうち1)及び3)は、爆心地周辺において被害をもたらすが、2)の灰(放射性降下物)は、爆心地付近から降下し始め、逐次風下方向に拡散、降下して被害範囲を拡大させる。このため、熱線による熱傷や放射線障害等、核兵器特有の傷病に対する医療が必要となる。
  • 放射性降下物は、放射能をもった灰であり、爆発による上昇気流によって上空に吸い上げられ、拡散、降下するため、放射性降下物による被害は、一般的には熱線や爆風による被害よりも広範囲の地域に拡大することが想定される。放射性降下物が皮膚に付着することによる外部被ばくにより、あるいはこれを吸飲することや放射性降下物によって汚染された飲料水や食物を摂取することによる内部被ばくにより、放射線障害が発生するおそれがある。したがって、避難に当たっては、風下を避け、手袋、帽子、雨ガッパ等によって放射性降下物による外部被ばくを抑制するほか、口及び鼻を汚染されていないタオル等で保護することや汚染された疑いのある水や食物の摂取を避けるとともに、安定ヨウ素剤の服用等により内部被ばくの低減に努める必要がある。また、汚染地域への立入制限を確実に行い、避難の誘導や医療に当たる要員の被ばく管理を適切にすることが重要である。
  • ダーティボムは、爆薬と放射性物質を組み合わせたもので、核兵器に比して小規模ではあるが、爆薬による爆発の被害と放射能による被害をもたらすことから、これらに対する対処が必要となる。

2 生物兵器

  • 生物剤は、人に知られることなく散布することが可能であり、また発症するまでの潜伏期間に感染者が移動することにより、生物剤が散布されたと判明したときには、既に被害が拡大している可能性がある。
  • 生物剤による被害は、使用される生物剤の特性、特にヒトからヒトへの感染力、ワクチンの有無、既に知られている生物剤か否か等により被害の範囲が異なるが、ヒトを媒体とする生物剤による攻撃が行われた場合には、二次感染により被害が拡大することが考えられる。
  • したがって、厚生労働省を中心とした一元的情報収集、データ解析等サーベイランス(疾病監視)により、感染源及び感染地域を特定し、感染源となった病原体の特性に応じた、医療活動、まん延防止を行うことが重要である。

3 化学兵器

  • 一般に化学剤は、地形・気象等の影響を受けて、風下方向に拡散し、空気より重いサリン等の神経剤は下をはうように広がる。また、特有のにおいがあるもの、無臭のもの等、その性質は化学剤の種類によって異なる。
  • このため、国、地方公共団体等関係機関の連携の下、原因物質の検知及び汚染地域の特定または予測を適切にして、住民を安全な風上の高台に誘導する等、避難措置を適切にするとともに、汚染者については、可能な限り除染し、原因物質の特性に応じた救急医療を行なうことが重要である。また、化学剤は、そのままでは分解・消滅しないため、汚染された地域を除染して、当該地域から原因物質を取り除くことが重要である。

 2緊急対処事態

市国民保護計画においては、緊急対処事態として、県国民保護計画において想定されている事態を対象とする。

事態例

想定

1 危険性を内在する物質を有する施設等に対する攻撃が行われる事態

(1)事態例

  • 原子力発電所の破壊
  • 石油コンビナート、可燃性ガス貯蔵施設等の爆破
  • 危険物積載船への攻撃
  • ダムの破壊

(2)被害の概要

1)原子力事業所が攻撃を受けた場合の主な被害

  • 大量の放射性物質等が放出され、周辺住民が被ばくする。
  • 汚染された飲食物を摂取した住民が被ばくする。

2)石油コンビナート、可燃性ガス貯蔵施設が攻撃を受けた場合の主な被害

  • 爆発及び火災の発生により住民に被害が発生するとともに、建物、ライフライン等が被災し、社会経済活動に支障が生じる。

3)危険物積載船が攻撃を受けた場合の主な被害

  • 危険物の拡散による沿岸住民への被害が発生するとともに、港湾及び航路の閉塞、海洋資源の汚染等社会経済活動に支障が生ずる。

4)ダムの破壊された場合の主な被害

  • ダムが破壊された場合には、下流に及ぼす被害は多大なものとなる。

2 多数の人が集合する施設、大量輸送機関等に対する攻撃が行われる事態

(1)事態例

  • 大規模集客施設、ターミナル駅等の爆破
  • 列車等の爆破

(2)被害の概要

  • 大規模集客施設、ターミナル駅等で爆破が行われた場合、爆破による人的被害が発生し、施設が崩壊した場合には人的被害は多大なものとなる。

3 多数の人を殺傷する特性を有する物質等による攻撃が行われる事態

(1)事態例

  • ダーティボム等の爆発による放射能の拡散
  • 炭疽菌等生物剤の航空機等による大量散布
  • 市街地等におけるサリン等化学剤の大量散布
  • 水源地に対する毒素等の混入

(2)被害の概要

  • 武力攻撃事態におけるNBC攻撃の場合と同様の被害である。

4 破壊の手段として交通機関等を用いた攻撃等が行われる事態

(1)事態例

  • 航空機等による多数の死傷者を伴う自爆テロ
  • 弾道ミサイル等の飛来

(2)被害の概要

  • 主な被害は施設の破壊に伴う人的被害であり、施設の規模によって被害の大きさが変わる。
  • 攻撃目標の施設が破壊された場合、周辺への被害も予想される。
  • 爆発、火災等の発生により住民に被害が発生するとともに、建物、ライフライン等が被災し、社会経済活動に支障が生ずる。

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