今回の展示作品は、佐藤達氏がパリ18区のアパートに住んでいた1972年の夏、自宅で制作した記念すべき3点のシルクスクリーン(Sérigrahie)版画はじめ1992年までに出版された作品の中から16点選んで展示させていただきました。
1972、3年の時期は色々な事に挑戦していた時期と伺っています。
平面的でありながら空間意識(平面的遠近法)を持っていた時期でもあり、それは抽象的浮世絵の空間意識を持っていた様に思われます。その、空間意識を捨てるのに時間がかかったと達氏はお話をしていました。
1969年のパリ留学から5年後、1974年の11月に、東京・新橋の第七画廊で初めての企画個展、1975年1月には仙台三越で企画個展を開催し、初めて郷土での発表となりました。
その後パリに戻り、更にヨーロッパの幾何学抽象的絵画を学び、ヨーロッパの画家達と交流を深め、この時期には空間的な作品は姿を消して平面的で直線の作品、ストライプの作品が生まれています。
そして、日本回帰とも言える達氏独自の作品が誕生、多くの色が使われていた時期から更に、配色を制限し、単純化した作品へと移行していった時期です。
また、1992年の版画はパリの版画工房、Del Arco で出版された作品です。同年夏には、みなみかた・国際アートフェスティバル(南方花菖蒲の郷公園)が開催され、野外立体作品も制作しています。
ヨーロッパの幾何学抽象絵画といっても、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、そして、ロシアも含めてそれぞれ違った文化と時代背景がありますが、それでいても繋がりがあり、複雑で深い世界があります。
パリ在住48年間で学んだ達氏は、これからもどんな作品を作り上げていくのでしょうか。今後も発表される作品を期待せずにはいられません。
ミュージアムにコレクションされている達氏の版画は50数点で、今回の版画展は、ミュージアムがオープンしてから初めて公開されるものです。