古関裕而と登米地方 本文へジャンプ

このたび、登米市が2021年前期に放送予定のNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」の舞台として取り上げられることになりました。いまから楽しみですが、この文章を書いている20209月に放送中の「エール」で、主人公のモデルとなっている古関裕而氏と登米市にもご縁があります。

古関裕而(本名、古関勇治)氏は、明治42(1909)、福島県福島市大町に生まれ、昭和5(1930)9月に日本コロムビア()に作曲家として入社しています。作品総数は、5000曲にもおよび、スポーツ・ラジオドラマ・歌謡曲・演劇・校歌・社歌など幅広い作品を残しています。代表作には、「船頭可愛や」、「長崎の鐘」、「とんがり帽子」、「君の名は」、「オリンピックマーチ」、「栄冠は君に輝く」、「阪神タイガースの歌(大阪タイガースの歌)」、「巨人軍の歌 ~闘魂こめて~」、「紺碧の空(早稲田大学応援歌)」、「モスラの歌」などがあり、世代を超えて愛される作曲家といえるでしょう。

その作品群のなかに登米市と関わるものが残されています。昭和39年(1964)に南方村の町制施行を記念して制作された「南方青年団歌」、登米町職員を務めた春日紅路(本名:静輝)氏が作詞を行った「PTAの歌」です。

「南方青年団歌」は、作詞を青年団員が行い、当時の衆議院議員・長谷川峻氏からNHKを通じて古関氏に作曲依頼がなされました。当時の団員の方の話によれば、曲が完成した際に、「サッキョクカンセイシタオイデコウ」との電報が届き、長谷川氏の秘書の案内で古関氏の自宅を訪ねたそうです。古関氏から渡された自筆楽譜や著作権譲渡証書は、20208月に市内在住の佐瀬德氏から登米市にご寄贈頂いています。

なお、この資料の草稿が、福島市古関裕而記念館に寄託されています。鉛筆書きで作成され、欄外に「39321」の記載があります。これは、作曲された日付とみられ、昭和39年(1964321日に「南方青年団歌」は完成したようです。

「PTAの歌」は昭和26年(1951)に毎日新聞、NHKの共催で募集されたもので、応募総数11,146通の中から春日氏の作品が文部大臣賞に入選、古関氏の作曲でレコード化されています。作詞者である春日は、大正12年(1923)に宮城県牡鹿郡荻浜村(石巻市)に生まれ、父方の実家が登米町でした。「PTAの歌」のほかにも「栗の実」、「夜のお使い」などを作詞し、昭和26年(1951)に登米町職員となると昭和56年(1981)の定年退職まで主に社会教育分野で活躍しています。

 

高橋 紘

 

参考文献

刑部芳則『古関裕而―流行作曲家と激動の昭和―』 中央公論社 2020

福島市古関裕而記念館ウェブサイト

「「PTAの歌」の作詞者・作曲者の紹介」(登米市歴史資料館 教育史料館配布資料) 2020




 
              南方青年団歌楽譜  古関裕而氏自筆