市長メッセージ
市民の皆さま、市長の布施です。
市民の皆さまには、市立病院の再編や改革に当たり、多くのご心配や不安の声をお寄せいただいております。今、全力をあげて取り組んでいますが、病院再編・改革の現況と私の考え方をお示しさせていただき、ご理解とご協力をお願いしたいと思います。
私が登米市長に就任したとき、合併前の登米郡8町と津山町の旧町から、5つの公立病院と3つの診療所を引き継ぎました。それぞれの町は、それぞれの方針に基づき病院や診療所を設置、経営しておりました。病院事業会計は、その時点でも、累積欠損金を計上しており、合併協議においても、新たな登米市の大きな課題と位置づけられ、鋭意、その対策について検討されました。しかし、合併協議においては再編や改革するという方向性については合意されたものの、具体的な枠組みが示されず、そのまま引き継がれたものであります。
この5病院体制は、永く市民の皆さまが親しんで、もっとも馴染みのある体制であることは存じており、できればこの体制を維持することが、市民の皆さまの利便を図り、もっとも受け入れられやすい好ましい策であると考えております。しかし、病院を取り巻く環境は年々厳しさを増してきています。具体的には、全国的な医師不足、研修医制度の改正、診療報酬の改定などで、国の医療制度が医療費抑制の方向に大きく舵を切ったことが、その原因と言われている側面もあります。
まず、全国的な医師不足や研修医制度の改正により、大学の医局からの医師引き上げ等によって勤務医の過重労働が顕著となってきました。登米市立病院でも、平成13年4月時点で50名勤務していた医師が、現在では40名となり、厳しい労働環境となっております。つまり、一日中、通常の診療をした後に当直をします。当然、夜間の外来診療や救急患者の診療、入院患者への対応もあり、満足な仮眠もとれません。そして、宿直明けの翌日も通常の診療を行うという勤務形態になっております。1回の勤務時間が、連続して32時間になっているのです。このような当直が月に2回から5回程度あり、実に過酷な勤務状況になっています。
また、研修医制度の改正により、大学の医局にも医師が少なくなり、大学病院から医師の派遣を受けていた登米市立病院では、派遣医師を引き上げられるという事態になり、大きな打撃を受け、現在のような医師不足、産科・小児科の休止という状況となっております。このままでは、過重労働に耐えられない医師が辞めていく事態が予想されます。
このような医師の勤務状況をご理解いただき、「市民の財産」でもある医師に意欲を持って市立病院で働き続けていただくためにも、市民の皆さまには、緊急の場合を除き、休日や夜間の安易な受診は控えるように心がけたり、身近な診療所に「かかりつけ医」を持つなど、病院利用についてもご協力をいただきたいと考えています。
医師の減少につれて入院患者も減り、年間延べ入院患者数は平成13年度の20万3千人が平成19年度は16万1千人と21%の減少となっています。また、診療報酬制度の改定で、診療初期の急性期の診療報酬は高いものの、入院から2週間を過ぎると大きく減額されるようになりました。つまり、入院期間が長引くと病院の収入が減ることになり、経営的に厳しい環境となってくる仕組みです。これが、国の医療費抑制施策です。平成18年度には、診療報酬で1.36%、薬価で1.8%の減額改定が行われ、これだけで約3億円の減収となりました。
さらに、登米市立病院では、集中的に医療行為を必要とする時期が過ぎて退院できる状況になっても、様々な理由により家庭に戻れず、福祉施設にも入所できないという、いわゆる社会的入院をしている患者さんが約50人おり、病院経営上の一つの課題ともなっております。
このようなことから、合併前の平成16年度は、5病院合わせて単年度5億2千万円の赤字であったのが、平成17年度は6億円、18年度は13億4千万円、19年度は15億円の赤字で累積赤字は87億円となっており、今後ますます赤字が増えることが予測されます。大変残念で心苦しいことですが、平成20年度の病院事業会計予算では、年間12億8千万円の赤字が予定されており、一日当たりに換算すると350万円の赤字となります。 このままの経営を続けていくと、登米市は病院事業を支え切れなくなり、病院と共に登米市本体の財政破綻を招き、国の管理下に置かれる財政再建団体へと転落する恐れさえあります。
このような状況下、昨年12月26日、登米市地域医療福祉体制検討委員会から「市立病院の再編計画報告書」の提出を受けました。私はそれを受け、「安全・安心の医療提供」、「医師の労働環境の改善」、「安定した経営基盤の確立」を目指して、市立病院の再編・改革の基本方針を決めました。今、この基本方針に基づき、再編・改革に取り組んでいるところです。 また、平成19年12月に国が示した公立病院改革ガイドラインに基づき、地域医療を確保しながら経営の建て直しと健全化を図るため、公立病院のあるべき姿とその役割を明確にした「病院改革プラン」の策定を、同時に進めているところでもあります。
今、医師を確保し、地域医療を確保することは、全国的な課題になっており、特に地方の市町村では、医療の過疎とも言える深刻で厳しい状況に晒されています。私は、市民の皆さまの医療ニーズを、全て、市内で完結できるとは考えておりません。とりわけ、専門的な医療技術を必要とする脳外科や心臓外科などは、大学病院など、最新の設備と専門的な医療スタッフをそろえた病院に、これまでもお願いしてきた経緯があります。
私は、隣の石巻市、大崎市、一関市の病院と、これまで以上の連携関係を築き、登米市内の病院で対処できない患者さんについては、受け入れていただけるようにしています。これら登米市外の病院に入院した場合でも、急性期を過ぎて回復期となった患者さんの受け入れが登米市立病院に求められることになり、これらに対応するための新たな回復期の病床設置も検討しています。
具体的には、これまでの市民の皆さまの入院状況と病床の活用状況を分析し、病床数を599床から327床に減らす予定です。また、先に述べた社会的入院をされている患者さんは、新たに整備する100床規模の老人保健施設などで対応していく考えです。さらに、できる限り住み慣れた地域や家庭で過ごしたいという、在宅医療を希望される患者さんには、医師や看護師が往診する訪問診療の体制づくりをする考えです。病院や訪問診療・看護を中心とした「医療」、老人保健施設や転換型特別養護老人ホーム、ケアハウスなどの「福祉」、在宅介護サービスなどの「介護」を総合的に組み合わせ、市民の皆さまの医療と福祉を守っていこうと考えています。
私としましては、「登米市型の地域医療体制」をつくり上げようとしているのです。このような取り組みをすることにより、市民の皆さまの健康を守り、受診機会と地域医療を確保し、市立病院の経営改善を図ることが可能であると確信しております。そのために、最大限の努力を傾注して、市立病院の体制を整えていこうと考えています。私は今、この登米市型の地域医療体制づくりに一緒になって汗を流し、取り組んでくれる医師を探し、呼びかけをしています。
このような考え方から、本年4月に、本当に断腸の思いで、登米病院を入院施設のない診療所にしました。平成23年度からは、米谷病院とよねやま病院を登米病院と同じように診療所にする計画です。入院については、佐沼病院と豊里病院で対応していく考えです。市民の皆さまには、これまで、近くにあった病院に入院できたのが、佐沼や豊里病院に入院しなければならないというご不便をおかけすることになりますが、なにとぞ、市立病院をめぐる医師不足や赤字を出し続けている経営状況をご理解いただき、この再編・改革にご協力とご支援をお願いするものです。
私は、市長に就任以来、医師の新たな確保にも努力してきました。議会のご理解もいただき、医師を目指す医学生への奨学金制度もつくり、現在、5名の学生が医学部で学んでいます。最短ですと、平成23年には、この奨学金制度による第1号の医師が登米市立病院に勤務することになります。これからも、毎年3名ほどの医師の確保に向けて、この取り組みを継続してまいります。また、産科と小児科については、医師が確保できず入院を休止している状態になっており、市民の皆さまに大変なご不便をおかけしております。これについても努力し、一日も早く再開できるように頑張るつもりです。さらに、今後の高齢者人口の増加という社会的背景を踏まえ、入院の必要性はないもののある程度の介護サービスを必要としたり、自宅での生活が難しいご高齢の皆さまが入居できる高齢者専用賃貸住宅の整備につきましても検討しております。
また、初期救急を充実させるため、市内の各消防出張所への救急車配備を進めています。これまでは、市消防署(迫町)に3台と津山出張所(津山町)に1台の、合計2箇所4台の救急車で救急業務を行ってまいりましたが、消防署と出張所、6箇所全てに救急車を配備することとしました。まず、本年10月1日から消防署東出張所(東和町)と西出張所(南方町)に配備し運用を開始しております。今後は、来年4月1日に南出張所(豊里町)に、平成22年4月1日には北出張所(石越町)に配備運用する予定で、合計8台の救急車で救急搬送のさらなる迅速化を図り、市民の皆さまの安全・安心づくりを進めてまいります。
私は、血涙を流す思いでこの計画を進めています。市民の皆さまには大変なご不便とご負担をおかけすることになりますが、これらの取り組みは、市民の安全・安心と将来に亘る登米市の医療を、継続的に安定的に確保し、さらに登米市全体の健全な経営を確保していくために断行するものです。いま、懸命に再編・改革の詳細を詰めているところです。市民の皆さまにはご心配をおかけいたしておりますが、一日も早く詳細をご提示できるように努力をいたします。
今後も折に触れて、随時、このようなお知らせもしていく考えです。私の考えも含めながら、現況の報告とさせていただきました。どうぞ、ご理解をいただきますようお願いいたします。
平成20年10月20日
登米市民の皆さまへ
登米市長 布 施 孝 尚